序章

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 熊谷凜太、幼稚園からの幼馴染みだ。今日は夏休みの宿題を手伝うよう頼まれていたのだ。クレープとパフェというお代はもうすでに前払いされてある。さらに後報酬としてケーキバイキングに連れていってくれるというのだから、幼馴染みの頼み事を無下にするわけにはいかない。  ──大丈夫、約束の時間まではまだ一時間もある。とりあえずお手洗いに……  由亜がドアノブに手を伸ばしたその時、ガチャリ。 「よう、由亜。なんだお前まだパジャマなのか。朝からぐーたらしやがっ──」 「ぅ、っおおおぉぉんんん!!」  無意識にのびる右ストレート。身長差が相成って由亜の小さな拳は凜太のみぞおちにジャストミート。凜太は腹をおさえてその場にうずくまった。 「な、なんでもう来てるの!?というかどうやって入ってきたの?」  たしか両親と妹は一昨日から北海道に旅行に出掛けていないはず。……く、なんで私も連れていってくれなかったんだ。
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