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凜太はよろよろと立ち上がって言う。
「暇だったから九時からいたぞ」
まさかの一時間前。
「でも鍵は?私戸締りちゃんとしてたよね?」
「チャーリーが開けてくれた」
あの駄犬っ!
我が家の飼い犬、チャーリーは鍵開け技能を習得している。部屋飼いのアイツは自分が脱走するために中から鍵を器用に開けるのだ。
「はあ……もういい。リビングで待ってて。着替えるから」
「別にそのままでも気にしないぞ?今更めかし込んだって手遅れ──」
「ぬぅぅううんんん!!!」
唸る左のコークスクリュー。今度はしっかり狙いを定め、凜太の脇腹へとダイレクトアタック。由亜は再びうずくまった凜太を蔑むように見下ろして、乱暴にドアを閉めた。
パジャマを脱ぎながらふと思う。
凜太、また背が伸びてたな。中学の間は私よりチビでからかってたのに、去年だけでどんだけ伸びてるのよ。声も変わった。低い位置から幼い声が聞こえていたのに、いつの間にか上から低い声を振りかけられている。
──もう子供じゃない、か。
由亜はクローゼットから新品の白いワンピースを取り出すと、シワのつかないように丁寧に身に纏った。
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