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二階の自分の部屋から一階に降りると、まずチャーリーが出迎えてくれた。
「おはようチャーリー」といいながら少し固めの彼の毛をワシャワシャと遊ぶ。チャーリーという名前に反し、日本犬のような出で立ちをしているこの雑種は五年前からうちにいる。自分で家を抜け出したり、自分で餌を見つけて勝手に食べたり、賢く、そして図々しいやつだ。
私とチャーリーの様子に気づいた凜太が、リビングから顔を出して言った。
「こっち来る前にジュース出してくれよ、俺、お客さん」
あいつは自分がなんでここにいるのか覚えていないのだろうか?由亜は震える右手をそっとおさえてキッチンへ向かった。
冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、二つのコップに均等に注いでいく。
いつの間にかついてきていたチャーリーが、急に由亜に向かって吠え出した。
「え、なに?どうしたの」
自由奔放なところがあるこの犬だが、人に向かって吠えることなんて滅多にない。ひとしきり吠えた後、グルル……と喉をならし勢いよく由亜に向かって飛びかかってきた。咄嗟に目を固くつむる。
「きゃっ──!?」
十キログラムはあるそれなりに大きいチャーリー。それがまっすぐ突進してきているから、当然ぶつかれば由亜は倒れるわけで──でも、そうはならなかった。
大型トラックの叫ぶようなブレーキ音が聞こえた気がした。
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