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ヤツは今、壁と天井が繋がる直角部に張り付いているわけだが、その50センチ下方には横並びでフックが2つ取り付けてあり、フックにはそれぞれタペストリーが掛けてあるのだ。
嫁候補のアニメキャラのやつが。位置的にはテレビの少し上に垂れる形で。
やばい。
俺のタペストリーがやばい。
『緊急事態。これは訓練ではない。対空見張りを厳となせ!』
脳内ではそんな放送が流れ、アドレナリンとも取れる妄想が始まっている。
仕留める!
今ここで!
タペストリーに近づかせるな!
タペストリーに描かれた、アイドルの星〇美希ちゃんと、スクールアイドルの高〇穂乃果ちゃんを守るのだ!
俺は部屋にある道具で使えるものがないか考える。
ハエ叩きは無い。というか長い得物が無い。
フライパンはリーチが短めだし、重いから俺の腕力では機動性に欠ける。
投擲して落とそうかと思ったがそもそも落としたらテレビの裏に落ちるわけだから処理が面倒だし恐い。
嗚呼、恐い。
やばい。何も思いつかない。
太刀打ちできるものが何も無いぞ。
俺の部屋がこんなにもGの襲撃に脆かったなんて!
恐い。
詰んでる。
笑顔で片手を差し伸べる穂乃果ちゃんと目が合った。
『……』
俺は、嫁候補たちを守れないのか。
そんなことで、ヲタクが勤まるのか。
『……ッ!!』
否!
俺は戦う!
タペストリーに向かって頷くと、徐に、首に掛けていたタオルを掴む。
俺の中で、1つの作戦が立ち上がる。
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