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――自分の呼吸に注目し、心を落ち着けましょう。
――深呼吸しながら、自然に囲まれている場面を想像しましょう。
――あなたは今、そよ風が心地よい大草原の中心に立っています。遥か頭上には青々とした空が広がり、お日様が温かい笑顔を振りまいています。
――落ち着いてきましたか?
――それでは次に、ボディスキャンをしましょう。
――自分の身体に起きていることを、五感を通じて認識するのです。
――眼鏡にくの字の黒いヤツが貼り付いてるよ?
――ほっぺに生ぬるい液体が飛び散ってるよ?
「はぁあぁあぁあああああうッ!!」
眼鏡をぶん投げる。
俺の緊急対応精神防御固有結界術マインドフルネスが破られた!
……まぁ、そうですよね。 BB弾で撃ったりなんかしたら、飛び散りますよね。
周囲には何も無いからまだマシとはいえ、床には足やら羽やら胴やらが散乱し、蝉の頭みたいなもの――そこから生えた触角がまだ元気に蠢いている。
ちりとりですくって、外に葬ろう。
「……」
なにはともあれ、『俺の部屋大戦』は終結した。嫁候補たちの平和は、守られたのだ。
「――ん?」
ふと、カーテンの方へ振り返ると、ぼやけた視界の中、開けっ放しの窓の次に、白い壁に張り付いた黒いナニカが目に入った。
そして、違和感から解析が進むにつれ、違和感が驚愕に、驚愕が恐怖に、恐怖が警報に、警報が発汗へと発展し――。 『第二次俺の部屋大戦』が、幕を明けた。
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