8人が本棚に入れています
本棚に追加
白い渦を作るクリームを混ぜ、死神はひと匙スプーンで掬うと、それを皿の端で一度止める。
その仕草でふと。この人は昔、家族に病人が居たのではないかと思った。
病人や高齢者に食事をさせる時、よくこうやってスプーンの上で熱を冷ます人がいる。
子供に食べさせる時なら、最初からあまり温め過ぎないようにするか、早く冷ますためにスプーンの上でふうと息を吹きかけることが多いだろう。
子供を世話する母親なら忙しいが、病人や高齢者相手なら、急かさないよう気をつけて世話をするせいだろうか。
とにかく。若い死神は、特に意識する様子もなく、今、自然にそれをした。
「自分で食べられますよ」
それが彼の仕事だとはいえ、これはいくらなんでも過保護だと思い、私がそう言ったが。
死神は黙ってひと匙のスープを、私の口元に近づけた。
温めたミルクの、濃厚な甘い香りが漂う。
唇に触れたポタージュは、もう熱くはなく丁度良い温度になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!