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「じゃあね」
「……おう」
反対側のホームへ向かう階段の前で挨拶を交わして足を踏み出すと、不意に槙は「なぁ」と私を呼び止めた。
「明日から篠田の事、“遥香”って呼ぶから」
「えっ、は?」
「じゃ!」
言い逃げするように去っていく槙。
大きな背中が小さくなって人混みに消えていくのを、私は呆気にとられたまま見送った。
今、私の顔は確実に赤い。
なんなら、数時間前まで恒祐でいっぱいだった頭の中は、まんまと槙で埋め尽くされている。
一言で言えば、完全に……
……参りました。
私は、
雨粒が乾きかけたビニール傘をきゅっと握り締めた。
「ズルいよ……直球高速ストレート」
そんな槙の事を、
私が“丈也”と名前で呼ぶようになるのは……
―――もう少し先のお話。
Fin.
next→表紙絵載せてます♪
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