強がりは雨傘に隠して

15/16
196人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「じゃあね」 「……おう」 反対側のホームへ向かう階段の前で挨拶を交わして足を踏み出すと、不意に槙は「なぁ」と私を呼び止めた。 「明日から篠田の事、“遥香”って呼ぶから」 「えっ、は?」 「じゃ!」 言い逃げするように去っていく槙。 大きな背中が小さくなって人混みに消えていくのを、私は呆気にとられたまま見送った。 今、私の顔は確実に赤い。 なんなら、数時間前まで恒祐でいっぱいだった頭の中は、まんまと槙で埋め尽くされている。 一言で言えば、完全に…… ……参りました。 私は、 雨粒が乾きかけたビニール傘をきゅっと握り締めた。 「ズルいよ……直球高速ストレート」 そんな槙の事を、 私が“丈也”と名前で呼ぶようになるのは…… ―――もう少し先のお話。 Fin. next→表紙絵載せてます♪
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!