強がりは雨傘に隠して

11/16

196人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
――――――――― 気づくと、雨は少しだけ小降りになっていた。 くしゅん! 堪えたつもりのくしゃみは思いの外大きくて、それに気づいた槙はそっと傘を持ち上げて私を見下ろした。 「……大丈夫か?」 「……うん」 私…………もう、大丈夫みたい。 「あーぁ……槙にとんだ弱点握られちゃったなぁ」 私がため息混じりにそう呟くと、 槙は「お前……」と眉をひそめた。 せっかく俺が見てない振りしてやったのに、とでも思ってるんだろう。 だけど、もういいの。槙には隠しても仕方ないから。 「私だけ晒したんじゃ割に合わないから、槙もなんか弱点教えなさいよ!」 「はぁ?嫌だよ。お前意味わからん!」 アハハ、と笑い合って、何だかかなりスッキリしたかもしれない。これも槙のおかげだ。 「好き、だったなぁ……」 「……過去形にできるんだ?」 「うん……できる、っていうか、する」 「すげーな、篠田は。 ……俺はいつまでも、過去形にはできそうもない」 槙が傘の柄を握る手にぎゅっと力を籠めたのを、至近距離で感じて顔をあげる。 「え?」 身体を向き合わせた槙の顔は、 4年以上の付き合いで一度も見たことのない表情をしていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加