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「いつも俺の隣ばっか見てて、俺のことなんか眼中に無くてさ。完全に脈ねぇなって思うのに、やっぱりどうしても諦めらんねーの。
学校にわざわざ自分の傘置いてきてまで、
こうやって一緒の傘で帰る口実が欲しかったなんて……バカみたいだろ?」
槙は、きまりが悪そうに頭を垂れて首の後ろを摩った。
「―――俺の弱点が知りたいって?
そんなの……
バカでもいいってくらい、お前に惚れてることだよ」
私の身体は、
槙を見つめたまま硬直したように動かない。
頭が真っ白になって、槙の言葉を理解するのに数秒かかってしまった。
「ほ、れ…………って……えっ!?」
「……お前、本当に俺のこと視界に入ってなかったな」
私の反応に苦笑いを浮かべた槙は、コホンと小さく咳払いをして、もう一度私に向き直った。
「俺が…………篠田の中の恒祐を過去形にしたい。
……っていうか、する」
「な……にそれ……」
「決意表明」
槙は、開き直ったようにそう言って、
それから「あー、あっちぃ……」と顔から後頭部までをわしわしと乱暴に掌で擦った。
よく見たら、坊主頭の槙のこめかみ辺りには汗が伝っていて、
緊張していたんだろうか……と思ったら、私は少し顔が緩んでしまった。
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