強がりは雨傘に隠して

14/16
196人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「とりあえずさ……俺はこのまま駅に着きたくねーんだけど、よかったら飲みもんでもどうですか」 槙が指差す先には、チェーン展開のコーヒーショップ。 駅に着きたくない、か。 なんか私の方が、調子狂うんですけど…… 「意外と直球な事言うんだ……槙って」 「……単に変化球が投げられないだけ」 「野球部なのに?」 「そうだよなぁ……って、俺キャッチャーだし。ってか、今は野球の話じゃねぇ!」 見事な二段階ノリツッコミに私は思わず吹き出してしまった。 お腹を抱えて笑う私の頭に、槙はコツンと軽く拳を落として「真面目な話……!」と続けた。 「もう少し一緒に居たい。頼むよ」 そんな風に言われたら、断れないよ。 そもそも、断るつもりは無かったけど…… 結局、私達がコーヒーショップを出る頃には、雨はすっかり上がっていた。 傘が必要なくなると途端にお互いの距離感がわからなくなって、槙と私は微妙な間隔を保ちながら、駅までの道を並んで歩いた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!