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「とりあえずさ……俺はこのまま駅に着きたくねーんだけど、よかったら飲みもんでもどうですか」
槙が指差す先には、チェーン展開のコーヒーショップ。
駅に着きたくない、か。
なんか私の方が、調子狂うんですけど……
「意外と直球な事言うんだ……槙って」
「……単に変化球が投げられないだけ」
「野球部なのに?」
「そうだよなぁ……って、俺キャッチャーだし。ってか、今は野球の話じゃねぇ!」
見事な二段階ノリツッコミに私は思わず吹き出してしまった。
お腹を抱えて笑う私の頭に、槙はコツンと軽く拳を落として「真面目な話……!」と続けた。
「もう少し一緒に居たい。頼むよ」
そんな風に言われたら、断れないよ。
そもそも、断るつもりは無かったけど……
結局、私達がコーヒーショップを出る頃には、雨はすっかり上がっていた。
傘が必要なくなると途端にお互いの距離感がわからなくなって、槙と私は微妙な間隔を保ちながら、駅までの道を並んで歩いた。
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