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今年同じクラスになったばかりの奥原さんより、私の方がずっと恒祐の事を見てきたし彼の事を知ってる。
だけど、そんな独りよがりな自負は、二人の間を繋ぐ恋心の前には全くの無意味で……
きっとこれから、
奥原さんは恒祐のことをどんどん知っていく。
私がまだ知らない恒祐も、
奥原さんにしか見せない恒祐も……
そう思うと、堪らなく悲しい。
恒祐の一番の女友達というポジションに甘んじて、何も行動を出来なかった自分が、今更情けなくて凄く悔しかった。
「遥香~、カラオケ行こうって話してるんだけど、遥香も一緒に寄っていかない?」
ホームルームを終えた教室で、私が鞄を手に席を立つと、クラスメイトに背中をポンッと叩かれた。
「あー、残念!今日バイトなの」
ごめん、嘘。今日はバイトなんて入ってないんだけど……
正直カラオケで盛り上がる気分にはとてもなれない。
「もー、店長がイケオジだからって、バイト入れすぎー!」
「オジって歳でもないのよ、30歳は!
結構目の保養なんだから」
「まぁ、大人っぽい遥香には歳上の男の人が合いそうだもんね~!」
私のことはそっちのけでキャッキャと盛り上がる友達。
以前私が、“バイト先の本屋の店長が俳優の誰々に似てる”とポツリと漏らしたところから派生して、
周りの友達には、なぜか私がその店長を気に入ってると思われてる。
もちろん、店長のことは何とも思っていない。
だけど、誰が好きだのとあれこれ聞かれるのが苦手な私にとっては都合の良い勘違いだったから、そういうことにして話を合わせてしまった。
結局、恒祐のことが好きだと誰にも打ち明けることができないまま、
私は一人ひっそりと失恋した。
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