強がりは雨傘に隠して

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下駄箱で靴を履き替えながら校舎の外に目を向けると、午後から降りだした雨はもう本降りになっていた。 私は傘立てから自分のビニール傘を探しだす。 ビニール傘率が高いからか、女子の間では目印や盗難防止に、可愛い柄の絆創膏に油性ペンで名前を書いて持ち手に貼るのが流行っている。 生憎キャラクターや柄物の絆創膏を持ち合わせていない私は、なんの変哲もない普通の絆創膏を貼っていたら、恒祐に『何かワケありっぽくて、ある意味盗まれなそうじゃん!』ってやたら笑われたっけ…… 鞄の中のスマホが震えてごそごそと探っていると、 指先があるものに触れた。 「あ……」 ―――折り畳み傘。 この間夕方から雨の予報だったときに鞄に入れてきて、結局使わずにそのまま入れっぱなしだったみたい。 濃紺に白の細かいドット柄のその傘は、 高校に入学したときに買ったもので、柄物が好きじゃない私が唯一持てる“女の子柄”。 折り畳みだから出番は少ないけど、結構お気に入りだ。 傘自体忘れちゃって困ることもあるのに、今日に限って2本もあるなんて準備良すぎ……と、心のなかで苦笑してしまう。 ―――ふと、視線の端に恒祐の姿が映った。 えっ、うそ……とっくに帰ったと思ってた…… 今までなら、真っ先に駆け寄って声を掛けてたはず。 けれど私は、咄嗟に下駄箱の陰に隠れてしまっていた。
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