強がりは雨傘に隠して

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昇降口から空を見上げて、困ったように頬を掻く恒祐。 周りには誰も居なく、どうやら一人のようだった。 傘、忘れたのかな…… 私は、バッグの中の折り畳み傘を取り出して握り締めた。 さすがに、彼女持ちに一緒に入ってく?とは言えない。 だけど、傘を貸すくらいなら、いいよね? 『まじで?貸してくれんの?サンキュー遥香!』 きっと、恒祐はそう言って私に笑ってくれる。 その笑顔くらい、独占してもいいよね……? 「恒……」 「城戸くん!お待たせしました……!」 声を掛けようと一歩踏み出した瞬間…… 反対側から現れたのは、彼女の奥原さん。 「紗也。大丈夫、全然待ってないよ」 チクリと胸が痛い。 奥原さんのこと、名前で呼ぶようになったんだ…… 私は、下駄箱の陰から呆然と二人を見つめていた。 奥原さんが、薄ピンク色の可愛らしい花柄の傘を傘立てから取り出して、 二人は当たり前のように相合い傘をしながら、校門の方へと歩いて行った。 キツい、なぁ………… 右手にビニール傘、 左手には渡す宛が無くなった紺色の折り畳み傘。 お気に入りの傘のはずなのに、途端に地味で可愛気の無いものに見えてきてしまう。 ピンク色の傘の下で小さくなっていく二人の後ろ姿を、私はこれ以上目で追うことが出来なかった。 虚しさと切なさで、胸が張り裂けそう…… 私は、ビニール傘の持ち手に貼ってある恒祐に笑われた絆創膏を、勢い任せに剥がした。 ほらね、元々傷なんてないんだから。 傷ついてなんか……ないんだから…………
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