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「……いらね」
「……はぁっ?」
なにそれ!せっかく貸してあげようとしたのに……
「恒祐に貸すはずだった傘は、いらない」
槙は表情一つ変えずに、そう私に言い放った。
……え。
私は、何も言えずに槙の顔を見上げた。
どういうこと?
ていうか、いつから見られてたんだろ……
まさかだけど、
私の気持ち、槙にバレてるの……?
ぐるぐると思考が渦巻く私の頭の中なんかお構いなしに、槙は無言で折り畳み傘を私の鞄に押し込んだ。
そして私の右手からビニール傘を取り上げると、バサッと開いた。
「ちょっ、それ……」
「ほら」
「え?」
槙は、傘をこちらに差し出して目配せをする。
「駅まで入れてって」
「なっ、なんで!私、折り畳み使うから……」
「いーから」
強引に昇降口から雨の中に引っ張り出されて、私は渋々傘の下に入る。
何なの、この状況。
彼氏でもむしろ好きな人でもない槙と、相合い傘して帰るって……
私には……
槙が、わからない。
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