強がりは雨傘に隠して

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槙と二人きりなんてシチュエーション、今までに無かったからどうなることかと思ったけど、意外にも普通に会話が弾んだ。 昨日見たドラマの事、私のバイトや槙の部活の事、明日の小テストの事…… 他愛もない話ばかりだけど、槙と話していると先程までのモヤモヤとした気持ちはいくらか晴れていった。 グループで居るときは気づかなかったけど、 槙って、実は凄く聞き上手だ。 なんのストレスもなく、まるで家族と話すときのように素で話せている自分がいる。 私のテンポに合わせてくれているのか、それとも本人にはそのつもりはなくて天性のものなのか…… 普段口数少なくてどちらかと言えばぶっきらぼうなのに、槙が恒祐に負けず劣らず周りから慕われてる理由が、少しわかった気がした。 それに…… 槙はあれから、恒祐と奥原さんのことに触れてこない。 私は、いつ話を振られるかと内心ドキドキしていたけど、それは杞憂だったみたいだ。 ……きっと、槙は気づいてる。 気づいていて、あえて触れないでいてくれてるんじゃないかと、何となくそう思った。 僅かな緊張も解けて、私が昨日の話をしていたとき。 「……それでさぁ、現国の授業中に恒祐が……」と言いかけて、私はハッと口を噤んだ。 “恒祐が突っ伏して寝てて、先生(通称オネエ)に耳に息を吹きかけられたときの反応が、めちゃくちゃ面白くて……”って話をしようとしていた。 気が緩んで、自分から恒祐の話を出してしまうなんて……バカみたい。 一度言葉に詰まると、変に意識してしまって続きが出てこなくなってしまった。 それに、これ以上恒祐の話をしたら、私…………
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