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「影の国の庭師にして花売り。表向きは」
ハイドレインジア国王は王座から花売りは少女を見下ろした。
「裏の顔は、日の国の復讐を目論む暗殺者か。影の国の奴が考えそうなことだ。その紫陽花が証拠だろう」
「私は、そんなつもりはありませんハイドレインジア国王陛下!」
色鮮やかな紫陽花を抱き抱えた花売りの少女は声を荒げた。
太陽を信仰する日の当たる国と、雨雲を信仰する影のさす国が起こした紫陽花戦争は、日の当たる国の勝利となり、影のさす国が敗北した。影のさす国の住民は貧しい暮らしを強いられている。花売りの少女、ポインセチアもその一人だ。
「紫陽花の根には猛毒があることを知っているだろう。猛毒で死ねといいたいのか女暗殺者」
「知っています。でも私が花売りをしているのは生計のためです。暗殺のためではありません!」
「仕方ない。真実を話すまで閉じ込めておくか。この女を捕らえろ!」
「そんな......!」
ポインセチアは王座の間から全速力で逃げ出そうとするが、国王の指示で動き始めたハイドレインジア兵たちに追いかけられてしまう。
ハイドレインジア城の外は灰色の雲が太陽を隠し、城では不吉の象徴とされる雨を降らせていた。ポインセチアは城の入口に停めておいたカタツムリの殻に飛び乗ると、影のさす国に向けて走らせながら日傘を差した。
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