第1章:First Sight

8/19
前へ
/214ページ
次へ
処置後の患者を看護師が車椅子で病室へ連れて行き 俺たちは使い捨てのグローブを脱ぎ捨て、 シンクで手を洗った。 先に洗い終えた櫻井先生は、 「意外と器用なんだな。お疲れさん。」 と、俺の肩をポンポン、と叩いた。 しかし すぐさま別の看護師に呼ばれ、 またグローブをはめ、 隣の分娩室へと消えて行った。 その後ろ姿は 桜の蕾が色づき始めた13年前のあの日、 愛し合っていると微塵も疑っていなかった俺を置いて、 一人去って行ったあの背中に良く似ていて 頭に一瞬鋭い痛みが走った。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4602人が本棚に入れています
本棚に追加