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処置後の患者を看護師が車椅子で病室へ連れて行き
俺たちは使い捨てのグローブを脱ぎ捨て、
シンクで手を洗った。
先に洗い終えた櫻井先生は、
「意外と器用なんだな。お疲れさん。」
と、俺の肩をポンポン、と叩いた。
しかし すぐさま別の看護師に呼ばれ、
またグローブをはめ、
隣の分娩室へと消えて行った。
その後ろ姿は
桜の蕾が色づき始めた13年前のあの日、
愛し合っていると微塵も疑っていなかった俺を置いて、
一人去って行ったあの背中に良く似ていて
頭に一瞬鋭い痛みが走った。
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