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「見えた」
ウィルの視線の先、見晴らしの良い平野のど真ん中を、巨大な三つ首の獣に跨がった人型魔族の群れが移動していた。
見た目はアリスが呼び出す聖獣に似ている。
真っ先に、接近するウィルの存在に気が付いたのは三つ首の獣だ。
首の一つが吠えて、他の魔族達へと知らされてしまう。
それでも、ウィルは足を止めない。
魔族達が一斉に弓を絞り、雨のように大量の矢が降ってきても関係無い。
ウィルは瞬時にゲイルカトラスを造り出し、振り抜く。
発生した暴風壁は矢を蹴散らしてウィルの進路を確保した。
更に、吹き荒んだ風がそのまま魔族達への逆風となり、弓の精度と矢の射程を削り取る。
弓矢の雨を抜け、三つ首の獣の側面へと躍り出たウィルがゲイルカトラスで先制した。
三つ首の獣ごと、弓を構えた人型の魔族を暴風の刃で粉微塵に吹っ飛ばす。
その隙を突いて別の個体が背後からウィルへと猛襲し、鋭い爪を横殴りに放った。
咄嗟に反身を翻し、片腕で爪を受けたウィルだったが、強化魔法が僅かに遅れる。
「……っ!」
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