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ウィルは待機場所を修正する為に駆け出した。
移動している魔族の群れが、追跡している聖魔の勇者に有利になる位置情報を送る筈が無い。
恐らくは、手紙を受け取っている事を前提に、聖魔の勇者が自分の場所を教えているのだ。
魔族と、ウィル達に。
「今まで魔族の群れに追い付いていなかったのは、ああやって狼煙を上げていたから……」
身体強化魔法を使用し、ウィルは更に加速する。
先に待機しているリリィも移動しているだろうから、この包囲網が狭まる事は無い。
ウィルは丘を疾風の如く駆け上がり、土と草を巻き上げながら勢い良く滑り下りる。
「僕が正式な四大勇者となった事を西の大国で聞いていたとするなら、他の四大勇者と南の大国を出発した事も知っている筈。そこから滞在する街まで掛かる日数を割り出して、僕達が手紙を受け取る日を予測して魔族達の群れをこの場所に誘導した……?」
昨日リリィとの話題にも上がったのだが。
聖魔の勇者が星印を着けた場所に国や街は存在していない。
恐らくは、魔族達が立ち寄った進行方向上の純粋な目印だろう、と。
聖魔の勇者は魔族達を意図的に誘導し、殲滅を目論んでいる。
ウィルとリリィはそう結論を出した。
緻密な演算からなる計画と此方を試すかのような大胆な作戦。
そこから予測される聖魔の勇者の性格、強かで打算的。
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