嘘吐き

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嘘吐き

 ─僕は嘘吐きだ─ 「おい、まだ終わらないのか!?」  昼下がりの空の元、野次が飛ぶ。  国営学舎の鍛練場でテーブルを囲む四人の男達が、一人の少年の姿を見て嘲笑していた。  建前上、この学舎の生徒である少年は鍛練場に転がっている大量の馬糞の始末に負われており、朝早くから休む事なく作業を続けている。  鍛練場は少年が昨日、一人で夜遅くまで掛けて全面を均しておいた。  筈、であったのだが。  早朝に叩き起こされて来てみると、蹄の跡と馬糞にまみれた、酷い有り様だった。  最早日常行事と化している、ランドル家の次期当主、レナルド・ランドルの度を超えた少年への嫌がらせである。  ランドル家は国でも有数の武術に優れた名家であり、彼の父親は学舎長とも親しい間柄だ。  将来を約束された有望な人間。  それを良い事にレナルドはやりたい放題だった。 「……すいません」  少年はレナルド達に深々と頭を下げて作業を再開する。  つまり、今日も嘘を重ねてしまう。 「相変わらず使えない奴だな、ウィル。馬糞の始末は『ロスト』の得意分野だろうに」  レナルドの無茶苦茶な悪態を、少年……ウィルは作業を行いながら無言で聞く。  繰り返される嘘の日常と罪悪感に嫌気が差した。  『ロスト』は、魔族の襲撃によって住む場所を失った人々の事だ。  これを四大大国は保護し、労働力と引き換えに住む場所を与えている。  しかし、彼等の身分は最も低く、劣悪な社会格差が生まれ虐げられているのが現状だった。  あらゆる雑用を押し付けられ、働かされては、鬱憤の捌け口にされている。
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