背中合わせ

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 ウィルの案内に従い、森を歩くリリィは、ついつい隣のアリスの表情を伺ってしまう。  アリスは、やがて魔王になる。  だから魂が復活する前に彼女を殺す必要がある。  それを行うのが四大勇者の最大の目的だ。 (皮肉なモノだわ。こんなにもお互いが側にいるっていうのに)  ウィルはアリスが魔石の相手である事も、また魔王である事も知らない。  アリスの正体が魔王だと知れば、その瞬間からウィルとは敵対する事になってしまう。  想い人が、自分を殺す四大勇者だった。  内心、アリスは辛い筈だ。 (私がアリスを連れ出さなければ、アリスはウィルの正体を知る事も無かった)  少しでも彼女の幸せを願いたいのに。  知らない方が、出会わない方が良かったのかも知れない。  そんなリリィの心境を知ってか知らずか、アリスが肩をツンツンと突っ付いてきた。 「ねぇ、リリィ。私ね、どうしても知りたい事があるんだ!」 「ん、え、ああ……そうなの? 私が知っている範囲でなら、力になれるかも知れないわ。何を、そんなに知りたいの?」 「うん。熱々に熱した鉄板の上に、リンゴジュースを一滴垂らすと、多分一瞬で蒸発すると思うんだけど、その時に甘い匂いってするのかなぁ?」 「知るかぁぁああああっ!!」  この子は本当に、もう。  そう思いながらも、リリィは毎回全力で怒ってしまう。  そしてアリスが「ゴメ~~~ン」と言って逃げ惑う。  いつもの関係、いつもの笑い声。
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