61人が本棚に入れています
本棚に追加
/268ページ
「え……?」
間抜けな声を上げた魔族が、目の錯覚かとばかりに続けてもう一発口から針を射出する。
が、またしても火花と共に針が弾けた。
今度は三連続で射出するが、火花が三つに増えただけである。
「どうなってんだ!? 魔法で防壁でも作ってやがったか!?」
「違う~。アイツ、あの武器で針を叩き落としてる~。もの凄い速さで鞘から抜いて、また鞘に戻してる~!」
「はぁ……!?」
体の全ての窪みから触手を伸ばし、緑色の魔族が言葉を絞り出した。
全身の触手眼球を総動員して、それでもようやく見える程度だとは、伝えなかったが。
リリィはその場から全く動かず、ただ立っているだけだ。
翼の魔族はそれを観察した後。
今度は連続で二百発を放った。
刹那。
リリィの前方で二百もの火花と金属音が瞬時に弾け、折れた針が宙を舞った。
全弾叩き落とすまでに時間差が生じた為か、今度はリリィが納刀する瞬間がウィルにも視認する事が出来た。
「終わり?」
刀の柄に手を乗せてリリィが尋ねた。
彼女の瞳に、恐れや焦りは微塵も宿っていない。
「こ、この女……!」
翼の魔族は口を開き、再び針を射出しようと狙いを定めた。
だが行動に反して、目の前の女から逃げろと本能が告げている。
最初のコメントを投稿しよう!