聖痕

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「え……?」  間抜けな声を上げた魔族が、目の錯覚かとばかりに続けてもう一発口から針を射出する。  が、またしても火花と共に針が弾けた。  今度は三連続で射出するが、火花が三つに増えただけである。 「どうなってんだ!? 魔法で防壁でも作ってやがったか!?」 「違う~。アイツ、あの武器で針を叩き落としてる~。もの凄い速さで鞘から抜いて、また鞘に戻してる~!」 「はぁ……!?」  体の全ての窪みから触手を伸ばし、緑色の魔族が言葉を絞り出した。  全身の触手眼球を総動員して、それでもようやく見える程度だとは、伝えなかったが。  リリィはその場から全く動かず、ただ立っているだけだ。  翼の魔族はそれを観察した後。  今度は連続で二百発を放った。  刹那。  リリィの前方で二百もの火花と金属音が瞬時に弾け、折れた針が宙を舞った。  全弾叩き落とすまでに時間差が生じた為か、今度はリリィが納刀する瞬間がウィルにも視認する事が出来た。 「終わり?」  刀の柄に手を乗せてリリィが尋ねた。  彼女の瞳に、恐れや焦りは微塵も宿っていない。 「こ、この女……!」  翼の魔族は口を開き、再び針を射出しようと狙いを定めた。  だが行動に反して、目の前の女から逃げろと本能が告げている。
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