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アリスの住む家は閑静な住宅街の中にある。それは普通の人々の普通の暮らしの中にポツリと取り残されたように立つ、古びた二階建ての木造アパートだ。アリスは一階の三番目のドアノブに手を掛けて、片っぽの耳をドアに押しつけ中の様子を伺った。静かだ。父親はまだ帰っていない。
カチャッ
玄関の上がり口にはゴミの入った白いレジ袋が散乱している。前日の朝、学校に行く前にゴミの収集場所に置いた幾つかのレジ袋はアリスが学校から帰ると、アパートのドアの前に無造作に放り投げられていた。見るとその中の一つに一枚のメモがガムテープで貼り付いている。
「家庭ごみは○○市指定のゴミ袋にキチンと入れましょう」
近所の誰かが自分が捨てるところを見ていたのだろうとアリスは思った。漢字はよく解らなかったがメモを書いた人の言いたい事は子供なりに解った。アリスは回収されなかったその幾つかのレジ袋をまた玄関に放り込んだ。そうやってゴミ入りのレジ袋はどんどん積み重なって行った。
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