アリス

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 ある夕暮れ時アリスがいつものように重い足取りでアパートに帰りドアを開けると、散乱していたレジ袋が○○市指定の幾つかのゴミ袋に綺麗にまとめられ下駄箱の前に重ねてあった。玄関の足元には一足の赤い靴がきちんとつま先を玄関ドアに向けて行儀良く揃えてある。  奥の部屋から珍しく父親の明るい声と若い女のカラカラとした笑い声が聞こえて来た。 「アリス帰ったのか」久しぶりに聞く父親の機嫌の良い声が部屋の中から聞こえた。  建て付けの悪いガラス戸をガラッガラッと開けると、派手な服を着た若い女が父親と卓袱台を挟んで座っていた。二人は同時にアリスを見上げて少し照れたような笑顔を見せた。 「アリスちゃん。こんにちは」と、女の赤い唇が動いた。
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