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いつの間にか夕暮れ時になっていた。アリスの小さな胸を締め付けるように「かあ~かあ~」とカラスは侘びしげに鳴いて、赤く染まった山の彼方へ何羽か並んで帰って行く。
「かえろう」……アリスは自分に言い聞かせるようにポツリと呟いて、誰も居なくなった公園のブランコからピョンと小さく飛び降りた。そして捲れた赤いプリーツスカートのお尻をぱたぱたと直して、教科書でズッシリと重たいランドセルを背負い直した。
どこからか甘辛い、良い匂いが漂って来る。アリスはその匂いを思い切り鼻から吸い込むと少し幸せな気持ちになった。
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