Epilogue

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 程なくしてお湯はり終了の音楽が鳴ったのを合図に、僕はまどろんだままの葵咲(きさき)ちゃんを、お姫様抱っこしてお風呂に向かう。  彼女が恥ずかしがると思って、身体にはシーツをかけた状態で運んだんだけど、シーツを介していても彼女の身体はうっとりするほど官能的で。  油断するとすぐに下半身がいきり勃ちそうで、僕は苦笑する。 (さすがに今からもう1ラウンド、は葵咲ちゃんが可哀想だ)  ぐったりと疲れたように弛緩した彼女の身体は、それでもとても華奢で軽かった。力が抜けている子を抱っこするのは案外重く感じられる、なんてよく聞くけれど、そうでもないんだな……なんて思いながら。 (ま、毎日重い本を運んでいるからな)  彼女を抱いたまま軽くシャワーで身体を流したあとで、僕は葵咲ちゃんと一緒に湯船に浸かった。  温かなお湯に包まれて、葵咲ちゃんがとろんとした目を僕に向けてくる。 「理人(りひと)。私たち、本当にしちゃったんだね……」  言って、嬉しそうに笑う。  僕も幸せだったけれど、彼女もそうなんだと思うと、それだけで天にも昇る心地だった。 「……後悔してない?」  聞くと、葵咲ちゃんは「全然」と即答してくれた。 「葵咲、愛してる」  僕は今までもさんざん告げてきた言葉を、今日ほど幸せな気持ちで彼女に言ったことはない。 「私も……」  こんな風に返事してもらえたことも初めてのことだったから。  僕は葵咲ちゃんの透き通るような裸身をギュッと抱きしめると、そっとその唇を優しく塞いだ。    END(2019.6.2〜2019.7.10)
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