*葵咲ばかり

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 エアコンを全開にした車の後部シートに隠れて、新しい下着と、ワンピースに着替えながら、車外で待つ理人をふと見やる。 (理人(りひと)は、汚れてないのかな……)  ズボンくらいは履き替えたほうがいいんじゃないのかな。  自分が身支度を整えたら、理人のことが気になって仕方なくなる。  私はさっきまで、白のシンプルなブラウスに、白地にモノトーンの花柄模様が入ったマキシスカートを身に着けていた。  着替えを済ませて車外に出てきた今は、黒地に白い花弁の小柄なマーガレットが一面にちりばめられたワンピース。  どちらも黒いサンダルにあわせられるコーディネートを、と思って選んだ服だけど、見た目の印象はがらりと変わったはずだ。  車から降りてきた私の装いを見た理人が、一瞬目を見開いて、ほうっとため息をつくように「可愛い……」と言ってくれた。  理人との旅行のために選んだ服。  それを彼に認めてもらえたのが凄く嬉しくて、同時に何だかとても照れてしまった。  照れくささを誤魔化すために、「理人は……着替えなくても大丈夫?」と聞いた。  その言葉に、私をまぶしそうに見つめていた理人が、にこりと微笑む。 「僕は大丈夫」  そう答えてから、私が服を全部着替える羽目になってしまったことに気がついて、「本当、僕だけ平気で申し訳ない……」と付け足した。  さっきまで着ていたブラウスも、マキシ丈のプリーツスカートも……果ては下着も……私の服は何一つそのまま(まと)い続けることは出来ない状態だったのを思うと……何だか私ばかりが感じさせられたみたいで、恥ずかしい。
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