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でも、実際は彼も緊張しているのが伝わってきて、私もますます照れてしまう。
それで何となく視線をさまよわせると、座っているところから、ガラス張りのお風呂場が見えた。
浴槽は直径1.4mくらいの信楽焼きの丸いつぼ湯。濃緑色がとても綺麗なお風呂だった。
お風呂場は外に面したところ以外は全面ガラス張りになっていて、必然的に部屋からも中の様子が丸見えになってしまう。
湯気がたてば少しは曇るかも知れないけれど、シルエットくらいは確実に確認できてしまいそうだった。
お風呂の外は高い垣根で囲まれた箱庭になっていて、箱庭に向いた面は腰の高さくらいまでガラスが張られた柵がついている。けれど、柵の上から天井までは何もない。
露天風呂つきの客室、と謳われている意味が何となく理解できた。
こんな丸見えの造りのお風呂、さすがに一人ずつ入るほうが恥ずかしいかも知れない。
でも、一緒に、と思うとそれはそれで照れ臭くて。
「……はい」
思わず緊張して返事が敬語になってしまった。
意識しすぎているみたいで、赤面してうつむいたら、理人の手がゆっくり伸びてきて、私の髪に優しく触れる。
夏なので下ろしておくのは暑くて、サイドテールにして、更にそれをゆるく編みこんでいた。
今日はさすがに色々ありすぎて、大分ほつれてきている。
その後れ毛を私の耳にかけながら、理人が「こっち向いて?」と言った。
ゆっくり顔を上げると、私の顔をじっと見つめる理人の顔が間近にあって。何だか凄くかっこいいな、って思った。
「葵咲、大好きだよ」
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