*湯けむりのなか

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 ()いで私の耳に唇を近づけると、そう言ってきて――。 (私が、理人(りひと)の服を……脱がせる?)  考えただけでドキドキと心臓がうるさいくらいに飛び跳ねた。  どうしたらいいのか分からなくて、救いを求めるように彼を見つめる。 「ほら、(すそ)に手をかけて上に上げていくだけだよ」  私の手を取って、自分が着ているサマーニットの裾に導く。  私は促されるままにおずおずと彼の服をまくり始める。  手が、理人の引き締まった腹筋に触れて、自分とは違うその感触に、彼は男なんだと改めて実感させられる。  何だかすごく照れ臭い。  途中まで彼の服をまくったところで、どうあっても身長差がありすぎて、脱がせるのは無理だと訴えようとしたら、理人が私の前にひざ立ちになった。 「これで、やりやすい?」  私の顔を下から見上げるようにしながら、問いかける。  私は、彼から見上げられることにどうしても慣れていないから、物凄く緊張してしまう。  それで、彼の視線を遮断するように、服を持ち上げた。理人はその動きに、バンザイをして脱がしやすいようにしてくれる。  だからかな。案外簡単に彼の上半身を裸にすることが出来てしまった。 「――お風呂、行こうか」  その言葉と同時に、私は理人(りひと)に突然膝裏(ひざうら)をすくい上げられて、お姫様抱っこをされてしまう。  あられのない自分たちの裸身がうっすらとガラスに映るのを見て、今更のように凄く恥ずかしくなる。  私は理人の首にギュッとすがりつくと、それを見ないようにした。
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