*湯けむりのなか

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 理人(りひと)はそう言うと、背後から私を抱きしめるようにして両胸に触れる。  最初は全体を包むようにやわらかく揉んで、次第に先端だけを摘むように指でこねる。 「あっ、ん……っ」  さっき自分の声が思いのほかこだましたのを思い出して私は慌てて口を両手で覆う。  すると、すぐに耳元に理人の熱い吐息がかかった。 「葵咲(きさき)、声、聞かせて……」  次いで、熱に浮かされた声でそう抗議され、口に当てた手を外される。それと同時に耳に熱い舌が這ってきて、耳の奥に侵入してくる。途端、ゾクゾクとした快感が首筋に走って、 「あ、はぁっ…」  私は溜め息に似た(あえ)ぎ声をあげてしまう。 「……葵咲の声、すごく色っぽいし可愛い……」  理人はそう(つぶや)くと、突然私を横抱きにして唇を塞いだ。 「んっ」  彼の求めに応じるように、私も(つたな)く彼の舌に自分のそれを絡める。……と、腰に当たる彼の熱が(たか)まるのを感じた。  理人は私に口付けながら、胸への刺激も忘れていなくて。  時折少し強めにつねるように摘まれる先端が、ジンジンとした熱を帯びて彼の指を跳ね返す。  ジワリ、と下腹部に、温泉のお湯ばかりではない湿り気が混ざるのを感じて、私は思わずもじもじと身じろいで足を閉じた。  まるでそれを察したように、理人の手が私の恥ずかしいところに伸びてきて――。  彼の男らしい少し骨ばった指の腹が、花唇を、亀裂に沿って数回行き来する。  それだけで、お湯とは違うヌルヌルとした(ぬめ)りが、彼の指の動きをスムーズにした。
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