*湯けむりのなか

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 思わず声が漏れた。  理人も、私を抱きしめたまま、押し殺したように熱い吐息を漏らす。  その声に、私は自然と聞いていた。 「ねぇ、理人。気持ち、いい?」  理人(りひと)を見上げるように、熱に浮かされた瞳で問いかけると、彼が唇を噛み締めてこくり、と(うなず)く。  今まで彼のこんな表情を見たことがない。  私は初めて、彼を困らせてみたい、と思ってしまった。  理人に抱えられるようにして腰掛けていた身体を起こすと、私は少しだけ角度を変えて彼のほうに向き直る。 「理人、うまく出来るかわからないんだけど……」  ほんの少し胸の奥に残った恥ずかしさを(まぎ)らわせるようにそう前置きをして、私は身体を(かが)めて理人の屹立(きつりつ)にそっと舌を這わせた。 「……ん、っ」  たったそれだけのことで理人が眉根を寄せて苦しそうにする。 「き、さきっ」  私の名前を呼ぶ声にもいつものゆとりが感じられなくて。 「理人、可愛い」  私は彼を見上げると、ニコッと笑って手の中の彼を恐る恐る(くわ)えてみた。 「え、ちょっ、葵咲(きさき)、待っ……あっ」  途端、頭上から、理人の慌てた声。それとは裏腹に、私の口の中の彼はグン、と硬度を増した。  私は理人の反応を(うかが)うように彼のものを口に含む角度を少し深くした。  と、今まで私に主導権を握られていた理人が、唐突に私の頭を(わし)づかんで、腰を引く。 「……もう、……おしまい」  理人が、息を整えながら言った――。
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