*湯けむりのなか

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葵咲(きさき)、口もいいけど……どうせイクなら僕はこっちで、がいい」  理人(りひと)が、私の下に触れながら言う。  唐突に、ちゅぷっと指先を身体の中に沈められて、予期せぬ刺激に思わず腰が浮いてしまう。  私は、調子に乗って完全に油断していた。  緩急(かんきゅう)をつけて抽送(ちゅうそう)を繰り返されて、その度に上がるいやらしい水音に、恥ずかしくて(たま)らなくなる。 「あっ、あ、あんっ、やっ」  一生懸命足を閉じようとしたけれど、その度に理人にイイところを刺激されて、身体がビクリと跳ねる。 「――さっきの、仕返し」  私の反応を見てニヤリと笑うと、理人が唐突に私の中から指を引き抜いた。 「んっ、やあぁっ」  もっと欲しいようなもどかしい気持ちがしたけれど、それはさすがに言えない。 「とりあえず、一旦休憩してお風呂、()かろう?」  理人が、勝ち誇ったような顔をして、洗面器を手に取った。  理人は、もう一度お互いの身体にかかるようにかけ湯をすると、私の手をとって、そっと浴槽に誘う。 「高さがあるから気をつけて」  床に埋め込まれたわけでもなく、ただ置いてあるだけに見える信楽(しがらき)焼きのつぼ湯は、結構深くて縁の高さもあった。  理人が(うなが)すままに、私は恐る恐るそれをまたぐ。  お湯は源泉かけ流しらしく、滔々(とうとう)と浴槽を満たし続けている。
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