*湯けむりのなか

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 私たちが入った途端、かなりの量のお湯が(あふ)れてしまったけれど、もともとちょろちょろと浴槽の縁から流れ出ていたんだから、仕方ないと思うことにした。 「お湯の温度、結構高めだね」  理人(りひと)が、私を自らの足の間に挟むように座らせていう。  さっきから腰の辺りに理人の硬くなったものが当たっていて……まだ身体に熱を抱えたままの私は、それを意識しないではいられなかった。  照れくささとお湯の熱さとで、すぐに逆上(のぼ)せてしまいそう。  私の、そんなぽやぽやとした雰囲気を汲みとったのか、理人が背後でクスリと笑う。 「余りしっかり浸かっていたら、葵咲、倒れちゃいそうだね。そうなる前に、さっきの続きをしなきゃ……」  理人の指が、背後から足の間に伸びてきて、まだ先ほどの熱を帯びてぷくりと熟れたままの秘芽を、わざと(かす)めるように、触れた――。 「ひゃあっ」  途端堪え切れずに上がった喘ぎ声に、頬が赤く染まる。 「さっきまでは葵咲の優勢だったのにね」  分かっていてクスクス笑う理人はいつもに増して意地悪で。 「積極的なキミも捨てがたいけど。やっぱり僕は、僕の腕の中で戸惑う葵咲のほうが好みだな」  さっき彼を攻めすぎてしまったことを後悔してももう遅いかな、と思った。 「葵咲(きさき)、立てる?」  理人(りひと)は湯船のなかで立ち上がると、私に手を差し伸べて立たせてくれる。  そうして立ち上がったばかりの身体を箱庭の見える窓際のほうへ向けられて、浴槽の縁に手をつくように後ろから指示された。
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