*湯けむりのなか

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 私は理人(りひと)に背中を向ける格好で、箱庭を眺める形になった。  外は小さなライトがぽつぽつと点在するだけで薄暗く、自然、目の前の窓ガラスは鏡面になる。  自分の姿と、背後に立つ理人の姿があまりにもクリアに見えて、とても恥ずかしくなった。 「葵咲(きさき)、窓ガラス、鏡みたいだね」  わざと声に出して今の状況を私に認識させると、理人は鏡の中の私を見つめながら、浴槽の縁に置いた私の手に、自らの右手を重ねる。  理人の手はとても温かくて大きくて、この手にいつも守られているんだと思うと、何だかとても照れくさくなった。  私はふとした瞬間に理人の男らしいところを発見してしまうと、何だか無性に恥ずかしくなってしまうところがある。  彼が私の手を握ったことで、自然、背中が理人に包み込まれるような形になった。触れ合う肌の感触が否応なく伝わってくる体勢に、私は思わず赤面する。  と同時に、空いていた左手で胸を優しく撫でられて、ついでのように先端の突起を(かす)めるようにはじかれた。  その刺激に、私は堪らず浴槽に頭を付くように前のめりになってしまう。それで、自然、腰が後ろに突き出されてしまった。 「葵咲、僕のが当たってるの、分かるよね?」  この状況で、腰の辺りに触れる彼の張り詰めた硬さに、気付かないわけがない。  でも、どう答えたらいいのか分からなくて、私は浴槽の縁を握る力を強くした。  すると、理人がそんな私の耳元にわざわざ唇を寄せて、「……下、触るね」と囁いてくる。
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