*湯けむりのなか

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 私は自分のあられのない姿を、窓ガラスに張り付くように身体を寄せて、見ないようにするので精一杯だった。  胸に、窓の冷たい感触が張り付いてきて、窓の外にもしも誰かがいたら……とか思うと、恥ずかしさが快楽の波に更なる追い討ちをかける。 「あんっ、()(ひと)っ、私、もぉっ、ダメぇ……っ」  私がそう言って身体を()()らせたのと、理人が私の中から自分を引き抜いたのとがほぼ同時で。  窓ガラスの表面を()るようにずり落ちて、風呂の縁に腹ばいにくず折れそうになる私の腰を、理人が片腕で抱きとめてくれる。  私は理人の激しさに溺れていてい気付かなかったけれど、彼は今回、ゴムをつけていなかった――。  そのことに、彼から熱い(ほとばし)りを背中から臀部(でんぶ)にかけて浴びせられて、私は初めて気が付いた。  山の中ですら、ゴムがないからと私に()れることを避けた理人なのに。 「葵咲(きさき)、ごめん……。僕、最低だ……」  私の身体を後ろから抱きしめながら、ぽつんと謝った彼に、私は熱に浮かされた頭の片隅で、「理人はどうしてしまったんだろう?」と思った。
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