理人の想い

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 それしか考えられない。  確かにそれは割と変なところで生真面目(きまじめ)理人(りひと)にしては有り得ない暴挙だったから。  中で出さなければ大丈夫、なんて馬鹿なことを理人は言わない。むしろ、避妊していても避けられない妊娠があるかもしれない、といつも気にしているくらいで。  もしもそうなったとき、僕はキミの人生を狂わせてしまいそうで怖い、とも言っていた。  本来なら結婚するまでそういうことはしちゃいけないって分かっているけれど、僕はそこまで辛抱強くないから……ごめんね、とも。 その理人が、何が理由かは分からないけれど、私を避妊具なしで抱いたのだ。衝動的だったにせよ、それを気にしないような人ではないと思う。  今、彼が猛省(もうせい)の渦の中にいるとしても……日頃の理人の言動を思えば分からなくはないことで。 「……ごめん」  私の想像を裏付けるように、理人がぽつん……と謝る。  それだけで、私は彼の悶々(もんもん)とした気持ちが垣間見えたような気がして。 「大丈夫だよ」  何が大丈夫なのかは分からないけれど……思わずそう、口をついていた。  私は思いつめた顔をする彼をギュッと抱きしめると、もう一度彼の耳元で力強く「大丈夫」とつぶやく。  言いながら彼を抱きしめる私を、恐る恐る理人が抱きしめ返してくれて……。  私はそんな彼のことを、心の底から愛しい、と思った。 「理人、大好きだよ」  気がつくと、自然とそう口にしていた。  さすがにその姿のまま話し続けるのは湯冷めしてしまいそうだったから。
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