理人の想い

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 私たちは一旦お風呂から出ることにした。  理人(りひと)(うなが)して身体を綺麗にすると、お湯に浸かって温まる。    湯船の中でも、私は彼のほうを向いて、ずっと彼に身体を預けるようにして寄り添っていた。  頭を撫でてみたいと思ったけれど、それをしようと思ったら彼に頭を下げてもらうか、私が立ち上がるかしないと無理なのでそれはしぶしぶ諦めた。  いつもお兄ちゃん(ぜん)として私を包み込んでくれる理人も好きだけれど、こんな風に私に弱ったところを見せてくれる彼も愛しい、と思ってしまう。  理人としては心外かもしれないけれど。  こんなに彼のことを大好きでたまらないのに――。  それでも情けないことに、私は彼に自ら口付けを落とす(すべ)すら見つけられない駄目な女で。  理人の顔を見つめながら、ぼんやりとキスしたいな……と思っていたら、理人が私の頬に手を伸ばしてきた。  そうして優しく私の唇を塞いでくれる。  彼からの甘やかな口付けを受けながら、やはりこんなときですら、私は理人には敵わない、と思ってしまった。  二人でお風呂から上がると、タオルで身体を拭いて、部屋に予め用意されていた浴衣に着替える。  湯船に浸かってキスしたからかな。  お風呂を上がる頃には理人も少し落ち着いてきたみたいで、さっきほど思いつめた様子はなくなっていた。  彼のことだから、実際はまだ色々考えていそうだけれど、それでも何となくホッとする。
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