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この旅館では、女性は色浴衣のレンタルがあって、理人にもチェックインの際に好きなのを選べるよ?とそちらを勧められた。でも、私は彼とおそろいの浴衣が着たくて、あえて宿浴衣をチョイスした。
二人で同じデザインの浴衣を着られるとか……何だか一緒に旅行に来たという実感が沸いて、わくわくするじゃない?と言ったら、彼もにっこり笑って「じゃあ、そうしようか」と言ってくれたのだ。
私はSサイズ、理人はLサイズの浴衣にしてもらっていたので、二人で浴衣の襟の所についたタグを見て大きさを確認しあう。
手に取ってみると、浴衣はコットン素材で、肌触りが良かった。
どちらも白地に藍色で描かれた飾り鎖模様で、旅館で着る浴衣といえば……と思い浮かべたら誰もが知っているような、オーソドックスな柄だった。
女性には臙脂、男性には紺色の丹前帯がセットになっていて。
温泉にくるということで、事前にインターネットで調べてみたら、女性は帯をウエストのところで元禄結びにするのが可愛いと書いてあったので、その通りにしてみる。
家で一生懸命練習した甲斐あって、結構うまく出来た!……と思う。
下着を一緒にして置いておかなかったから、一糸纏わぬ上に浴衣、だけど後でこっそり身につければ大丈夫、かな?
そんなことを思いながら浴衣の合わせなどに気をつけて、一心不乱に帯を結んで理人を振り返ると、彼は既にそつなく着こなしていて――。
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