3550人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕はキミに異性の知り合いがいるのを目の当たりにすると……不安でたまらなくなる。いつか誰かにキミを奪われてしまいそうな気がして……でも誰にも渡したくなくて……。あんまりにも怖くて、葵咲のことを滅茶苦茶に壊したくなってしまうんだ。さっきも――」
そこで一旦言葉区切ると、理人は腿の上に載せた両の手にグッと力をこめる。
「さっきも……葵咲に僕の子供が出来たら……キミは僕から逃げられなくなるんじゃないかって……そんなことを考えてしまった……。僕は本当に最低だ」
共学の学校に籍を置いていたのだから、異性の友人や知人がいることは当たり前のことで……それは不思議なことではないと頭では分かっていても、心が追いつかないのだ、と理人は言った。
目の前で私が理人の知らない人間関係を垣間見せると、そこから色々悪い想像をしてしまうらしい。
「僕にだって女性のクラスメイトや知人がいないわけじゃないのにね」
そこでとても悲しそうな……どこか自虐的にも思える笑みを口の端に浮かべると、俯いてしまう。
「私が……異性として好きなのは理人だけだよ?」
理人の表情が余りにも辛そうで、私は思わずそう言って目の前に座る彼の手を取っていた。
「正木くんだって、本当にただのクラスメイトの一人で……今日たまたま再会するまで存在だって忘れていた人だし」
こんなことを言っても彼の気持ちは鎮まらないかもしれないけれど、私にはこんなありきたりな言葉しか掛けて上げられない。
それが、凄くもどかしかった。
最初のコメントを投稿しよう!