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「理人、どうしたら貴方の不安を取り除けるかな?」
握ったままの彼の手を包む力を少し強くして、私は問いかける。
何をしたって彼が安心できることはないのかもしれない。
それでも、そう聞かずにはいられなかった。
「……ごめん、葵咲。僕にも分からないんだ」
それが分かったら、二人とも苦労しないのに。
今、この場で私の心を取り出して彼に見せてあげることが出来たなら……どんなにいいだろう。
そう思った。
そこでふとあることを思いついた私は、理人にそれを言ってみる。
「私が理人の恋人だと……視覚化できたら少しは違うかな?」
少なくとも私は、理人が自分の恋人なのだと他者からも分かるようになったなら、とても嬉しい。
私だって、理人が誰か他の女性たちからちょっかいを出されやしないかといつも不安なのだから。
私の彼に手を出さないで。
パッと見で、そう牽制できたなら、どんなに素敵だろう。
「……視覚化?」
理人が私の言葉を繰り返す。
「そう。……あの、引かないでね?」
今から私が言おうとしていることは、ある意味とても重い内容だと思う。
「私、理人と……ペアリング、付けたい……」
理人の手を触りながら、上目遣いでそう切り出してみる。
自分でも、あざといことをしているという自覚を持って、見上げるように彼の目をじっと見つめた。
理人の視線が私のそれと絡んだのをしっかり意識しながら……私は彼の左手の薬指を指先でさわさわと撫でた。
そうしながら、はっきりと告げる。
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