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よくよく考えてみたら……私がさっき理人に言ったことって……ある意味プロポーズだったんじゃ?……と気付いてしまったから。
私が理人を誰かに奪われたくない気持ちと、理人が私に対して抱いている感情は恐らく同じもので……。
そんなヤキモチ妬きの私たちが、曲がりなりにもほんの少しでも安心するためには、公に認められた契約のようなものが必要なのかもしれない。
「葵咲、ちょっと待っててね」
理人が私をギュッと抱きしめてから、名残惜しそうに身体を離しながらそう言った。
私も、彼のぬくもりを手放すのが何となく淋しくて、彼が離れる瞬間、思わず手を伸ばしてしまう。
「……すぐだから」
そんな私の様子ににこりと微笑むと、理人は部屋の片隅に置いた自分の荷物の横に跪いた。
私からは彼の背中しか見えなくて、理人が何をごそごそやっているのか良く分からなかったけれど……何となく、「あ、ゴムかな」とか思ってしまって……自分のその考えにドキッとして真っ赤になった。
(わ、私、何を期待しているのっ)
つい今しがた、お風呂でそういうことをしたばかりだというのに。
私は理人と一緒にいると、どんどん彼が欲しくて堪らなくなる。
幼い頃から一緒にいたはずの彼なのに……。
理人のことを知れば知るほど、彼を手放したくなくなってしまう。
理人も、私と同じ気持ちなのかな。
手に入れた途端、それを失いたくなくて守りに入ってしまうのは、人間の本能だろうか。
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