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理人のことを兄だと思おうと頑張っていたときには、彼が私に近づいてくることが恐怖でしかなかったのに。
――と、ぼんやり考え事をしていた私の上に陰が落ちた。それに気が付いて視線を上げると。
「お待たせ」
理人が、ベッドサイドに立って私を優しい表情で見下ろしていた。
彼は手に白いものを持っていて――。
「……?」
何だろう?って思ったら、理人に手を取られてベッドから下ろされる。
促されるままに理人の目の前に立った私に、
「葵咲、引かないでね?」
そう言って不安そうな顔をする理人。そんな彼が凄く愛しくて、私は思わず首を横に振る。
「大丈夫。私、何があっても理人のこと、大好きだよ」
それに、高校生の頃にされたあれやこれやを思い起こせば、少々のことでは驚かないし。
そう付け加えて笑ったら、理人が困ったような顔をして苦笑した。
「それ、言われたら参っちゃうな」
そう言って、困惑したように眉根を寄せた理人が、堪らなく愛しい。
「理人、大好き……」
思わずそう呟いたら、シーッという仕草とともに、唇に人差し指をあてがわれた。
「それを言うの、今度は僕の番だからね」
そう告げて、理人は私の前に跪いた――。
いきなりの理人の行動に、私は戸惑いを隠せない。
「……理人?」
恐る恐る呼びかけると、彼が私の左手を取って見上げてきた。
「葵咲、僕とずっと一緒にいてくれますか?」
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