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意気地なしでごめん。
理人はそう言って、私の手を握る力を少しだけ強くした。
私は、理人の、そういう押しが強いくせにどこか臆病なところも大好きで。
でも、彼はそのことに気付いてもいないんだろうな。
私は理人をじっと見つめると、「そういうところも全部ひっくるめて、私は理人が大好きだよ」って、視線に込める。
さっき、理人が私に「好きだ」って気持ちを述べるのは自分の番だから言っちゃダメって言ったから。
私の気持ち、理人に届くかな?
そう思いながら彼を見つめていたら……。
「こんな僕だけど……葵咲を大好きな気持ちだけは誰にも負けないつもりだよ」
そう、理人に言われて、私はなんだか気持ちが通じたみたいで嬉しくなる。
私は、半ば夢見心地でうっとりと彼を見つめた。
――と、そんな私の指に、理人が指輪をそっと嵌めてくれる。
いつの間にサイズを測ったのかな、と思ってしまうくらい指輪は私の左手薬指にぴったりで。
私は彼に付けてもらったばかりの指輪がとても嬉しくて――。
嬉しすぎて、気が付いたらポロポロと涙を落としながら泣いてしまっていた。
「えっ、ちょっ、葵咲っ!?」
途端立ち上がって、オロオロと私を抱きしめてくる理人。
私は涙を拭いもしないで彼をじっと見上げると、
「すごく……嬉しいの……」
泣き顔のまま、彼ににこりと微笑みかけた。
しばらくの間、私は気持ちの昂りが抑えられなくて、理人の腕の中ではらはらと涙を落とし続けた。
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