気だるい身体

3/4
前へ
/624ページ
次へ
 結局あれっきり、理人(りひと)は私に何もしてこなかったみたいで――。  目が覚めると、私は理人に後ろから抱きしめられるような格好で眠っていた。  少し身じろいで理人と向かい合うように身体を動かしてみても、彼は目覚めない。  目の前に、理人の見慣れない無防備な寝顔があって、思いのほか睫毛(まつげ)が長いな、と気がついた私はドキドキしてしまう。  ずっと彼の寝姿を見ていたいような気持ちもしたけれど、心臓がうるさくて息が苦しいので断念する。  理人に注意を払いながらそっと身体を起こすと、私はこっそりベッドを抜け出した。  時計を見ると午前六時半過ぎ。  夜は何時ぐらいまで起きていたのか分からないけれど、疲れはすっかり取れていて快調だった。  昨夜は理人に色々としてもらって眠りに落ちた覚えがある。  ばっちり覚醒(かくせい)した頭で思い起こすと、何だかとっても恥ずかしくなってきた。  せめて寝起きぐらいはしゃきっとして彼の目覚めを待とう。  そう思った私は、音を立てないように静かに洗面所にいくと、顔を洗ってさっぱりする。  荷物から今日着る服を選び出すと、いそいそとそれに着替えた。  今日は白いブラウスに、柚葉色(ゆずはいろ)のふんわりスカート。  ブラウスは襟元と袖口にフリルがあしらわれていて、シンプルだけど女性らしさを感じさせてくれる。  スカートはミモレ丈のボックスプリーツ。コットン素材でとても涼しくてお気に入りだけど、少し(しわ)になりやすいのがネック。
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3550人が本棚に入れています
本棚に追加