気だるい身体

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 一泊二日の旅行なのに、理人(りひと)とお出かけだと思うと嬉しくて、服を一式多く入れてしまっていた。  でも、初日に着替えをする羽目になってしまい、結果として同じ服で彼とデートしなくて良くなって、ホッとした。  靴だけはどれも黒いサンダルに合わせられるコーディネートを用意したけれど、服のせいで荷物が多くなってしまったのは事実。  理人が私の荷物まで持ってくれたことを思うと、かさばり難い、薄い生地の夏服でよかった、と思ったのは彼には内緒にしておこうかな。    服を着替えてお化粧を整えて、理人を見ると、彼はまだぐっすり眠っていた。  相当疲れているのかな。  私と一緒のときは微塵(みじん)もそんな気配を感じさせない彼だけど、こうして無防備に眠っている姿を見ると、そんな風に思う。  チェックアウトは11時までだったから、もう少し寝かせておいてあげよう。  そこでふと、「そういえば、家族にお土産(みやげ)を買ってなかったな」と思い至る。  本当は昨日、観光途中に色々と見繕(みつくろ)うつもりだったけれど、予定が狂ってしまった。  親公認でお泊りに来たのに、お土産なしはまずいよね。  宿泊案内のリーフレットを確認すると、同じ階――1階――にある売店は七時からやっているみたいで。  時計を見ると、もうすぐ開店する時間だった。  私は少し迷って、理人にメモ書きを残すことにする。 “ちょっと売店に行ってきます。スマホ、持っているので何かあったら連絡ください。    葵咲(きさき)”  忘れないようにスマホとお財布を手に持つと、私は少し迷って部屋のカードキーは持たずに出ることにした。  昨今は旅館もホテル同様オートロックになっていて、ここも例外ではなくて。  でも、そのお陰で、理人が眠っていても安心して外に出ることが出来る。  オートロックになっていなかったら、鍵を持ち出すか、もしくは扉を開けっ放しで外に出ることになるし、それはさすがに気が引ける。  スマホがあれば大丈夫だよね。  最後にもう一度だけ理人の寝顔を堪能すると、私はそっと部屋を抜け出した。
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