ハプニング

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 正木くんの言葉に、私は段々腹が立ってきて、彼をキッと睨みつけた。 「んな怖い顔すんなって。たださぁ、そんな目立つところにキスマークつけるとか……自己顕示欲の固まりすぎるだろ。丸山が恥ずかしい思いするかも、とか考えられてねえって事だろうし」  そこまで言って、正木くんは 「俺ならそんなこと、絶対にしない」  そう、断言する。  確かに言われて見れば正木くんの言葉には一理あって……でも、でも、と思ってしまう。 「わ、私! 嫌じゃない……っ!」  理人にこういうことをされるの。  首筋のキスマークを押さえながら正木くんの目を負けじと見つめ返した。 「そっか……。なら」  正木くんの顔が首筋に迫ってきて――。  私はびっくりして彼を押し戻す。 「いや!」  はっきりと拒絶の声を発したら、 「こう言うのされるの、いやじゃないんだろ?」  耳元で、そう、(ささや)かれた。  正木(まさき)くんの豹変(ひょうへん)ぶりに、私は息が詰まるくらい恐怖心を覚える。  余りに怖くて、喉の奥が引きつれて、息が上手くできなくなる。  逃げなきゃ!と思うのに身体が(すく)んでしまって動けなくて。  私はどうしていいかわからずに、ギュッと目を(つぶ)ることしか出来なかった。  と、私の首筋に触れていた彼の呼吸がふっと遠くなって。  続いて聞こえてきたドンッという鈍い音。 「葵咲(きさき)、大丈夫っ!?」  直後ふいに頭上から降ってきた優しい声と、嗅ぎ慣れた大好きな香りに、私はやっと目を開けることができた。
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