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「それにね、理人。こういう痣はコンシーラーで隠せちゃうんだって」
理人をギュッと抱きしめ返すと、私の肩から顔を上げた彼を見上げてにっこり笑って見せた。
実は私も、さっきスマホで調べて知ったばかりの方法なんだけれども。
正木くんとの一件の後、首のキスマークを絆創膏で隠そうかな……とか思っていたけれど、調べてみるとそれはあからさま過ぎて余計に恥ずかしいことなのだというのも、同時に知った。
コンシーラーで、という方法は確かにとても合理的に思えた。
染みなどを隠せるそれならば、この赤みだってカバーしてくれるだろう。
私の言葉に、理人が「え?」と言う。
男性にコンシーラーだの何だの言っても、分からなかったかな?
そう思った私は、「染みとか隠せるお化粧品ね」と付け加える。
「そう、なの?」
理人がきょとんとした顔で私を見つめる。
「うん、そうなの」
わざと、そんな理人の言葉をなぞらえるようにして答えると、私は彼に笑いかけた。
「葵咲もソレ……えっと、コンシーラーだっけ? 持ってるの?」
興味津々と言った感じで理人が問いかけてくるのが面白くて、私は思わず声を出して笑ってしまう。
「もちろん。……あ、隠すの、あとで理人にやってもらおうかな」
多分食いつくだろうな?と思ってそう提案したら、「いいの?」って聞いてくる彼が可愛すぎて……。
思わず声を出して小さく笑ったら、理人がそんな私をギュッと抱きしめてきた。
「葵咲、可愛い」
ついでに、私が彼に言いたかったセリフも横取りされてしまう。
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