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良くも悪くも私たちは似たもの同士なのかも?
そんなことを思ってしまった。
***
そんなことをしている間に、朝食をお願いしていた時間になったらしい。
仲居さんが食事を運んできてくれたようで、来訪を伝えるチャイムが鳴った。
その気配に、私は思わず身じろぐ。
部屋には鍵もかかっているし、まさかチャイムを鳴らされてすぐに扉を開けられることはないと思うけれど、イチャイチャしているところを人に見られるのは矢張り恥ずかしい。
「理人……」
言いながらそっと彼を見上げると、彼は優しく頷いて手を緩めてくれた。
***
「はぁーい!」
途端彼の腕をすり抜けた私は、照れを誤魔化すように大きな声を出して来訪者に応えた。
と、扉に向かおうとした私の手を掴んで制すると、理人が動いてくれる。
彼が入り口の鍵を外して仲居さんたちを招き入れると同時に、美味しそうな香りが部屋中に漂った。
座卓の上に並べられたのは、横三列、縦二列に仕切られた黒塗りの木枠――箱膳――。その中に、小皿や小鉢が六つ並べられていた。
そこへ、ほんの少しずつお豆腐や煮物や佃煮などの料理、それからデザートが入っていて、それとは別の器に切り身の焼き魚と、汁物とご飯。
朝も、私の大好きな和食で嬉しくなる。
朝食の準備を終えると、ごゆっくりどうぞ、と告げて瞬く間に仲居さんたちは去って行った。
私はとりあえずお茶を淹れると、理人の向かい側に座る。
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