僕の……

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葵咲(きさき)……」  シャンパンをひとくち口に含んでから、理人(りひと)が私の顔をじっと見つめながら呼びかけてきた。 「……?」  グラスを置いて彼を見つめ返すと、理人がとても真剣な顔をして小さな箱を取り出す。 「……長いこと待たせてごめん。やっと準備が整ったから……」  リボンのかかった可愛らしい箱を私に差し出してくる理人に、私はそれを恐る恐る受け取った。  この大きさとこのシチュエーションからすると、中身はきっと……と思いながらも、間違っていたらと思うと、変に緊張して指先が震えてしまう。 「開けてみて?」  理人に(うなが)されるままに震える指で何とか包みを(ほど)いて箱を開けると、中には白いリングケースが入っていた。  恐る恐るそれを小箱から取り出して(ふた)を開けると、キラキラと光を跳ね返すダイヤモンドが目に入った。  それは――シンプルなデザインの、ソリティアリングで。……婚約指輪に、見えた。 「葵咲、旅行中にさ、帰ったら一緒に住まないか?って話したよね」  指輪を見つめたまま固まってしまった私の手を包み込むように両手を重ねてきた理人が、意を決したように話し始める。  彼の手は、緊張からかとても冷たくて……。 「恋人として一緒に住むっていうのも……勿論ありだと思う。でも……僕はそういう中途半端な状態のまま、キミと暮らしたいなんて……葵咲のご家族に言うことは出来ないって思ったんだ。だから――」  そこまで言って、一瞬不安そうに言葉をとめると、理人は私をじっと見つめながら言葉を(つむ)ぐ。
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