僕の……

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 理人(りひと)の喉が、唾を飲み込んで上下したのが分かった。 「……キミは学生だし、勿論(もちろん)今すぐってわけじゃなくて……その……ゆくゆくはって感じで考えてくれたんでいいんだけど……。でも……いつか。そう遠くない未来に……その……ぼ、僕の……お嫁さんになってもらえますか?」  いつもはしっかり者で何でもそつなく(こな)す理人が、緊張のためかしどろもどろになる様が本当に愛しくて……。  それと同時に私自身、まさか彼がそこまで考えてくれていたなんて思わなくて、驚きと嬉しさで感極まってしまう。それで、知らず瞳に涙が盛り上がった。 「えっ、ちょっ、葵咲(きさき)!?」  突然の私の涙に、理人がオロオロと戸惑いながら立ち上がった。そうしてテーブル越しに、私の目元を震える手で優しく拭ってくれる。冷んやりとした彼の手が、上気した頬に心地好(ここちよ)くて――。 「……お願い……します」  私は、震える声で何とかそれだけ言うのがやっとだった。 「ホントに!? ヤッターッ!!」  途端、その言葉を聞いた理人がいきなり仁王立(におうだ)ちで天を仰ぐようにガッツポーズをして――。その余りに激しい動きと声に、私は驚いて彼を見上げた。 「り、理人(りひと)っ」  (こぶし)を振り上げて立ち上がったままの理人に、徐々に周りからの視線が集まる。その気配に我に返った私は、小さな声で彼を(たしな)める。  幼い時分からそうだったけれど、彼は時折周りが見えなくなる。  それでも、理人がこんな風に暴走するのを見たのは本当に久しぶりで。
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